MLX90632 放射温度計センサークリックボード(CLICK-IRThermo)は、物体が放射する赤外線から物体の温度を非接触で測定できるボードです。
メレキシス社製の非接触温度センサーMLX90632を搭載しています。-20℃〜200℃までの物体温度を、最高-20℃〜80℃までの環境下で測定が可能です。
また物体の温度の他、センサー周囲の温度も測定しており計算に利用します。
非接触にて物体の温度が計測できるため動物の表皮温度、回転するような物体の温度計測等様々な範囲の温度計測に応用ができます。(※1)
通信方式は、I2C通信です。
キャリブレーション定数は内部のEEPROMに工場出荷時に保存されています。
内蔵の温度センサーで周囲温度を計測後、キャリブレーション値と物体の放射温度測定後に得られた値(RAMに保存)をマイコン等からI2C通信で読み取り、データシートに記載の式で計算し温度を算出します。(※2)
測定分解能は0.02℃です。
視野角(FOV)は50°です。(※3)
MLX90632には3つの動作モードがあり、CONTINUOUSモードでは連続して計測を行い、サンプリングレートは0.5秒間隔(設定で16msまで可能)です。
このボードはMLX90632を簡単に利用できるようピンピッチ2.54mmにしたクリックボードです。電源電圧はジャンパー設定により3.3V又は5.0Vを選択可能です。
I2C信号線にはPCA9306のレベル変化ICが付加されていますので、3.3V系回路、5V系回路どちらにも接続できます。
I2CのSDA及びSCL線は1kΩの抵抗器でプルアップされています。
制御に必要なI2C信号線や割り込み線、電源(+3.3V又は+5.0V)が2.54mmピッチのmikroBUSから取り出せます。
■補足事項をお読み下さい■
※1:赤外線放射温度計では一般的に対象の物質により誤差が生じます。例えば鏡面など放射率の低いもの、透明なものは誤差が大きくなります。水の放射率は0.95程度あり計測に向いています。ガラス越しの物体は測定できずガラス板の温度が測定されます。
また研磨された金属のように反射率の高い物体は測定に不向きです。
※2:セルシウス度(摂氏)で温度データを算出するためには、データシートに記載の式で計算する必要があります。計算には浮動小数点演算が必要です。I2Cマスターのマイコン等は浮動小数点演算ができる必要があります。
※3:物体の温度測定には、センサーのスポット径が、測定する物体のすべてをカバーしている必要があります。MLX90632の視野角は50°です。例えば距離3cm先ではスポット径は約2.8cmとなります。計測対象物は少なくとも直径2.8cm以上の大きさである必要があります。スポット径より小さい物体の温度測定では計測値を不正確になります。
よってスポット径を小さくするには、測定物体との距離が近い必要があります。
市販されている放射温度計より視野角が広いため距離の離れた物体の温度測定には不向きですが、温度分解能が高く距離が近ければ高精度な温度測定が可能です。
※MLX90632のデータシートはこちらです。
※I2C通信例 1:デバイスの初期化とEEPROMから較正値の取得をする時
※I2C通信例 2:被測定物の温度を計測する時